Feldjäger装備パート1 腕章編
第一回目はFeldjägerの象徴である腕章についてです。
では時代の流れに沿ってFeldjägerの使用してきた主な腕章を紹介しましょう。
・憲兵隊創設期から80年代まで :白腕章(四角型)
80年代に登場した国旗付きの白腕章は以前の腕章とは大きく異なる形状となり、Feldjägerで新たに白革ベルトを導入したタイミングで腕章も更新したと考えられます。この白ベルトと白腕章の組み合わせをWeißzeugと呼びます。バイクエスコート部隊を除いたFeldjägerでWeißzeugが使用されなくなる2000年代前期頃まで使用されていました。
・1980年代末から1990年代末 :海外派遣用黒腕章
90年代に入るとドイツ連邦軍ではunosomⅡ,SFOR、IFOR、KFORといったミッションで国外に派遣される機会が増えました。これら国外派遣任務の中で、Feldjägerという表記は他国の人間にとって馴染みがなく憲兵である事がわかりずらい事から、米軍の憲兵腕章に近い、黒地に白字でMPと書かれた腕章を使用するようになります。
https://www.militaryimages.net/threads/somalia.8430 |
例えばUNOSOMⅡで見られる米軍タイプのフェルト黒地腕章に国連ワッペンの付いている腕章。
Y. Magazine der Bundeswehr. 01/2004. p.101 |
Kommando Feldjäger der Bundeswehr. 60 Jahre Feldjäger in der Bundeswehr. Akzente STREITKRÄFTE BASIS.2015.p.119 |
そしてこれら国外派遣任務で特注した腕章が現在使用されている黒腕章のベースとなりました。
・1990年代末から現在 :黒腕章
CPM Forum. Das Feldjägerwesen der Bundeswehr - Bundeswehr Military Police. 2011. p.22 |
90年代の国外派遣では腕章だけでなく、前時代的で実用性に欠けるWeißzeugからより実用的な装備が求められ、部隊もしくは個人で調達したビアンキやアンクルマイクス等の黒いナイロン製のベルトキットを使用するようになりました。ここで使用されるようになった黒いベルトキットの流れがやがてFeldjäger全体でGKproTime Copベルトキットを正式採用することにつながります。そしてこれまでの白いベルト白い腕章の組み合わせがWeißzeugであったのに対しこの新しい黒いベルトキットと黒腕章はSchwarzzeugと呼ばれるようになりました。『60 Jahre Feldjäger in der Bundeswehr.2015』によると1992年からWeißzeugからSchwarzzeugへの移行へ向けた取り組みが行われ、2004年に正式に移行が完了したとされています。
Kameradschaft der Feldjäger e.V. DER FELDJÄGER. 1.Quartal 2004.p26 03年警察合同ピストル射撃大会の記念写真:白黒両腕章が混在している例だが大会の記念写真であるため使用例としての説得力は弱い |
左の黒腕章はSFOR、KFORに派遣されていた元憲兵隊員から譲り受けた物ですが、現在使用されている右側の黒腕章とベルクロの形状が若干異なります。これは最初期に作られた物でKFOR初期に使用された部隊ワッペンのサイズに合わせたためと推測されます。
https://www.flickr.com/photos/michaelsvg/2388697777/in/album-72157604395454571/ |
さて現在もなお使用されている黒腕章ですが裏地の質感、生地の暑さ等で微妙な違いがあります。また黒腕章はレプリカ品が多く存在します。見分ける特徴としては文字の刺繍の粗さ、裏地の質感、そしてもっともわかりやすいのが国旗で、本物が刺繍であるのに対して、レプリカは野戦服などと同様の国旗ワッペンを縫いつけてあります。この点に注目する事で本職かエアソフターかもある程度見分ける事ができます。
・その他の腕章
ドイツ国内で公式に使用されている(いた)一般的な腕章は先に述べた白腕章2種、現行の黒腕章の3種類ですが例外もあります。
オレンジ色腕章
このオレンジの腕章は身辺警護や覆面捜査で私服を着用している隊員が有事に着用する物ため普段はポケットに隠し持つ腕章で、その特性から全く使用例がないのです。
Kameradschaft der Feldjäger e.V. DER FELDJÄGER. 2.Quartal 2002.p19 |
CPM Forum. Das Feldjägerwesen der Bundeswehr - Bundeswehr Military Police. 2011. p.38 |
これらの腕章は一見すると通常の黒腕章のようですが実は裏返すと別の腕章になっています。
この腕章は軍の正規品ではなく部隊オリジナルの腕章で、裏面はそれぞれ部隊の駐屯地域の紋章や中隊色等で構成されています。
マインツの部隊を退役した友人の元憲兵隊員曰くこれら部隊オリジナル腕章は任務終了後に裏返して着用する事で憲兵の任務中でないことを示しつつ憲兵隊員である事アピールするためだとか。
補助憲兵腕章
続いてこちらはよく憲兵の腕章と勘違いされがちな腕章。
feldjägerと文字が入っていますがこれは補助憲兵腕章と呼ばれる物で憲兵腕章ではありません。基地祭等大規模警備の際の人員不足を補うために憲兵資格のない兵士が一時的に憲兵の補助の任務に就く際に着用するもので、憲兵隊員以外の一般の兵士も良く着用します。
ただしあくまで補助であるため、憲兵の専門性の低い基地祭警備や大規模検問などでの出番がメインで、単独ではなく必ず憲兵と共に任務にあたっています。
また、装備も間に合わせの事が多く、Weißzeug時代には正装用の黒い革ベルトもしくは野戦ベルトに黒革のP1ホルスター。Schwarzzeug時代では下の写真のようにs95のベルトにp8ホルスターを着用することが多いですが、近年では憲兵隊員と同様のSchwarzzeugを支給される場合も見られます。
https://www.flickr.com/photos/michaelsvg/2389527224/ |
上の写真は08年3月31日に聖パウルス大聖堂前での軍のイベントの警備をしている憲兵隊を平和団体が撮影したもので、同イベントでは撮影した平和団体による抗議活動への対応に追われる憲兵隊の様子がよく映っています。
・レプリカ腕章について
最後に市場に出回っているレプリカの腕章について少し書いておきます。
レプリカ腕章にも2通りありまして、ちゃんと本物の腕章を再現しようとした再現系腕章と、とりあえずMPやfeldjagerの文字が入っていればそれっぽいだろう系腕章があります。
前者は黒腕章を再現したもので、パッと見はそっくりですが、先に述べた国旗が刺繍ではなくワッペン縫い付けであるためよく見るとレプリカであることが判ります。
後者は特にフレック柄の腕章にMPやfeldjagerなどの文字の入ったワッペンを縫い付けただけの物で、参考になった実物もなく使用例もありません。
再現系腕章レプリカならともかく後者の腕章は軍装をする人は買わない方がよいでしょう。
・最後に
国内外のショップで売られている腕章の多くがレプリカ腕章やショップオリジナルの腕章である可能性が高いです。特に憲兵隊はその特性からショップオリジナルアイテムやお土産品などが多く注意が必要です。
ここまでFeldjägerで主に使用された腕章は紹介しましたが、国外部隊向け腕章や部隊オリジナル腕章については一部しか紹介していません。そのためここで紹介した腕章のみが実物というわけではありませんが、皆さんが実際に腕章を購入される際の参考になれば幸いです。
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